2018年6月3日日曜日

武雄市図書館・歴史資料館の新築移転(2000年10月〜)と指定管理者導入(2013年 4月〜)での図書館利用カード登録数、増減の比較

 武雄市図書館・歴史資料館の直営/指定管理者移行後の図書館利用カードの登録数については直営時カードの有効期限がなく累積枚数となっているため、この数字の人口カバー率を比較しても意味がないとの意見が出ていた。(市教委も2015年9月8日市議会で同種意見を答弁している

 指定管理者移行直前と直後の比較は確かに難しいが、では武雄市図書館・歴史資料館が新築移転開館した2001年以降の比較は可能なのではないか。武雄市の山内町・北方町との2006年3月1日合併前の為、人口は今よりも1万数千人少なかった訳ですが、市内利用者の人口に対する比率、前年からの増減を比較する事は可能。以下にその表とデータを示す。
(2017年5月18日佐賀新聞記事の2016年度の市外登録者数は昨年度数字が誤掲載されていたので、総数-市内数を差し引いて算定した)


表1:2017年度結果反映版

更新情報:
2018/8/26:子ども図書館来館30万人達成報道の情報を追加。
2018/6/3:表を2017年度版に更新。
2017/6/5:表5を追加
2017/5/17:表を一部修正。(2014年来館者数訂正(800,735→800,736)、2014年利用登録者数訂正(市内14,237→14,217、市外29,979→29,999。合計は変わらず)
2017/5/17:表を2016年度版に更新。
2016/5/20:2015年度実績値を表1に追加。佐賀新聞記事の表を元にした表2を追加。
2016/5/11:初版掲載

特記事項
人口:
 2000年は佐賀統計年鑑の市町村便覧(10月1日時点)を、2013年以降は武雄市サイトで公開されている各年度3月末時点の人口統計データに依った。
 2001年度の人口統計は2000年10月1日時点のものが掲載されていた為、仮にその値を入れている。
図書館統計:
 直営時代の数字は「日本の図書館 統計と名簿」の各年度版書籍に依った。(掲載単位は千人)
 指定管理移行後の数字は情報開示請求されて公開されている指定管理者の報告書内の数字に依っている。
移転新築および指定管理者導入時期)
 武雄市図書館・歴史資料館は2000年10月1日に新築開館。2012年10月末休館。
 指定管理移行後の武雄市図書館は2013年4月1日開館。
 子ども図書館は2017年10月1日開館。
図書館利用カードの有効期限)
 直営時代は図書館利用カードの有効期限は定められていなかったが、2000年10月開館時に図書館利用カードを刷新している事が「広報たけお」2000年9月号などの記述で確認できる。
 指定管理移行後は発行後3年間と有効期限が定められており、2016年より更新されなかった分の失効が発生していて大幅減少の要因になっている。
参考資料:
参考資料1)[武市教文生1]武雄市図書館平成26年度指定管理報告書
参考資料2)さが統計情報館:佐賀統計年鑑
参考資料3)たけおポータル 注:Excelファイル (2016年5月11日閲覧)
参考資料4)佐賀新聞:武雄市図書館の来館者、15年度9%減/2年連続減 貸出利用者は市外が45%(2016年5月19日閲覧)
参考資料5)佐賀新聞:CCC運営の武雄市図書館 来館5.4%減68万人 16年度 注目落ち着き、登録更新せず(2017年5月18日記事)

新築移転時があった2000年は人口カバー率が30%近く上昇しており、新館効果が大きく出ている。図書館利用カードはこの時に切換が行われており、登録者数も新カード発行者数が報告されていた可能性が高い。ただ、もし旧カード枚数込みだったとしても9,560人=人口カバー率27.63%となり、指定管理者移行時の23.89%を上回る。

開館1年後の市内利用者の図書館利用カード登録増減数を比較すると、2001年度3,800人の増加に対して2014年度2,189人と大きな差が生じている。

開館2年後の図書館利用カードの増減数を比較すると、2002年度3,000人の増加に対して2015年度871名にとどっており、2014年度増減数と比べても半分を下回っている。
新築移転時は2003年でも2,700人の増加となっており、CCC指定管理者制度導入後の図書館活用という観点では異常に早いペースで新館効果を失っている事が分かる。

図書館利用カード更新期限を迎えた2016年度は対前年比20,289人減という大幅減少が起きている。(市外:15,127人減、市内:5,162人減)2017年度の図書館利用カード登録数は26,039人(3,429人減)となった(市外:3,091人減、市内:338人減)。減少幅は小さくなったが止まっていない。

表2
2016年度の来館者数、貸出数、貸出利用者数、利用登録者数はリニューアル開館時に比べてどの数字も概ね2〜3割減という結果になっている。武雄市側は70万人で安定すると述べているが、現時点で68万人という実績なのに何故切り上げて楽観的に考えるのか理解に苦しむ。
なお来館者数は書店・レンタル・カフェ、歴史資料館企画展示室の見学者もカウントに含まれるので、この数字の増減に一喜一憂する必要は本来ないはずのものである。歴史資料館は武雄鍋島家資料を有しており企画展では1ヶ月の会期で1万人を越える来場者が来られたものもあった。(2014年度。平均来館者は2,200人/日程度。会期中はうち500人/日が企画展を見学されており押し上げた)

2017年度は10月1日に子ども図書館が追加された事で来館者数は73万1千人と初めて前年割れを回避した。子ども図書館での来館者数は半年間で17万8千人(3.0万人/月)となっており、本館側の例年1割程度の減少の穴埋めをしたと考えられる。
なお2018年8月24日に30万人達成したと報道された。2018年4月から約5ヶ月で12万2千人(2.4万人/月)の来館があった事になる。

グラフ1:貸出冊数・貸出人数推移(市内、合計)

表3:貸出冊数・貸出人数推移

表4:予算・決算額推移


グラフ1、表3では2011年平均貸出数を元に市内と市県外の貸出数推移を推計してみた。貸出冊数は合計しか公表されていないため、貸出利用者比率を元に計算している。
市内貸出数は2011年実績の26.9万冊だったが、2015年度には早くも下回っており回復していない。
図書館費は人件費を除いた経常経費の予算額、決算額がこれまで「日本の図書館 統計と名簿」で報告されてきていたが武雄市が図書館費を抜いた資料費のみ報告しており、2015年決算額、2017年予算額は不明。
資料費は武雄市合併後、リニューアル前から削減されて決算額ベースでは1300万円程度で推移位しているが、これが増えればさらに延びるかもしれない。ただ2014年決算を見ると予算は1500万円だったのに結局1300万円で終わっており直営時代より150万円近く下がった水準で定着している。2017年度予算でもこの点は変わりなかった。
リニューアル時の資料入れ替えを除くと指定管理者になっても資料費は横ばいのまま図書館費だけ開館時間延長のために延びているという図式の妥当性についても疑問を感じる。一つ言えるのは予算難だからツタヤ図書館になった訳ではないという事。予算総額自体はどのツタヤ館でも増えている。図書館の延命のためという意見を目にする事があるが明らかに誤りである。

図書館のパフォーマンスを評価するのであれば、貸出数や来館者数以外にレファレンスを受けた数、複写機利用枚数などいくつか指標が考えられるし、来館者数もカフェ・書店のみ利用と図書館のみ利用、両方利用の把握がなされてないと意味がない。武雄市図書館報道はこの種の適切な検討がなされてないのは問題だと思う。

参考:平成28年度武雄市歴史資料館企画展
2016年4月8日〜5月29日『よみがえった如蘭塾展』
2016年8月6日〜9月4日『だんな様のお買いもの』
2016年10月15日〜12月11日『古武雄-武雄のやきもの再発見-』
2016年12月24日〜2017年2月5日:図書館展『スゴロク図書館~佐賀・熊本・大分の3県めぐり旅~』
2017年3月17日〜4月16日『たけおのお宝 Part1』