2015年3月2日月曜日

2014年ジュンク堂書店仙台本店・仙台ロフト店閉店関連の新聞エッセイを読んで

ジュンク堂書店の仙台本店が2014年10月29日に閉店(当初31日とされていたが2日前倒しされた)になった件について、今年に入って毎日新聞がコラムで書店の危機として取り上げられていました。調べてみると情報欠落している所があったのでまとめてみました。

参考リンク:
 毎日新聞:記者の目:消える街の本屋さん=中西拓司(東京科学環境部)(2015年2月27日掲載)

※毎日新聞のWeb記事はWeb会員登録(無料)で全文読む事が出来ます。


1. 丸善ジュンク堂系列書店の仙台での動向
仙台では丸善ジュンク堂系列の書店は最多4店舗が展開していましたが、2014年にジュンク堂の2店舗が閉店しました。ただこの後に入ったテナント見るとちょっと不思議な事が見えてきます。

(1)震災前
 ジュンク堂書店
  仙台本店(1997年開店。900坪)+喜久屋書店漫画館(1998年開店。300坪)
  仙台ロフト店(2003年開店。470坪)
 丸善書店
  アエル店(2002年8月開店。606坪)
 ※アエル店の情報はLIXIL出版書店訪問ページを参考にさせて頂きました。

(2)震災後
 ジュンク堂書店
  仙台本店2011年7月〜2011年11月の間、現仙台TR店に一時移転。572坪)
  仙台ロフト店
  ※喜久屋書店漫画館は2011年被災後〜11月まで営業休止
 丸善書店
  アエル店

(3)2011年11月仙台本店復旧後
 ジュンク堂書店
  仙台本店(2011年11月元店舗で再開。1200坪(書店部分))+喜久屋書店漫画館
  仙台ロフト店
  仙台TR店(リニューアルの上で2011年11月開店)
 丸善書店
  アエル店

(4)2014年8月〜
 ジュンク堂書店
  仙台TR店(50万冊、572坪)一般書主体→仙台本店閉店後は専門書主体に転換
 (2014/10/29閉店)仙台本店(120万冊、1200坪(書店部分))→喜久屋書店
 (2014/8/31閉店)仙台ロフト店(50万冊、470坪)→文教堂JOY
 丸善書店
  アエル店(50万冊、606坪(書店+その他営業面積含む))

※仙台本店の在庫冊数は2011年11月営業再開時の告知文書の数値を採用。なおイービーンズのテナント紹介ページでは1200坪70万冊と記載されていた。(河北新報の仙台本店閉店発表時の記事では50万冊と記載。)
もし、イービーンズの数字が正しいなら坪あたり在庫冊数が仙台TR店や丸善仙台アエル店に比べて低く、仙台本店が閉店したのも無理ないかも知れない。


2. 仙台ロフト店の閉店と後継テナント
 ジュンク堂書店仙台ロフト店の閉店後の後継テナントとして文教堂JOY仙台ロフト店が2014年10月10日にオープンしています。(3万冊、260坪。漫画・アニメとプラモデル販売の複合店で漫画の他に雑誌・一般書を扱う)

 文教堂も丸善ジュンク堂も大日本印刷の子会社の立場にありますので、同じ資本系列の書店において扱う商材を変更するという転換が行われたと考えられます。
なお店舗面積はジュンク堂時代の470坪から260坪に、在庫冊数は50万冊→3万冊ですので大幅に縮小されていますが、これはアニメやプラモデル関係の営業面積が大きいという事だと思われます。


3. 仙台本店の閉店と後継テナント
ジュンク堂書店仙台本店が入っていたイービーンズの空いたフロア(3・5・6・7F)のうち5・6Fには8Fでコミックコーナーを営業していた喜久屋書店が2014年12月5日より移転オープンしており、その際に総合書店に転換していますので、結果としては従来喜久屋書店漫画館(300坪)含め5フロア1500坪だったところが2フロア計480坪に縮小される結果となっています。
(喜久屋書店仙台店については仙台経済新聞「仙台駅前・イービーンズの「喜久屋書店」、館内移転増床-総合書店に刷新」に詳しく出ています)

 なお仙台本店の閉店に伴って仙台TR店の取扱書は一般書→専門書に変更されています。
震災復旧後のジュンク堂書店仙台本店フロア構成
3F 雑誌・流行書・小説・文房具(丸善)
5F 生活・新書・文庫
6F 自然科学・経済・法律
7F 人文科学・芸術・学習
8F コミック(喜久屋書店)
「みちのく砂丘Retrospective ジュンク堂仙台本店閉店」を参考に一部加工
2014年12月5日以降のフロア構成 
3F (他店舗)
5F 喜久屋書店、(他店舗) 
6F 喜久屋書店
7F (他店舗)
8F (他店舗)
この他、アニメ関係のテナントが出店しておりイービーンズサブカルシフトしたとの報道もされています。
 河北新報:ギャルからサブカルへ 仙台駅前西口ビル転換(2015年2月25日掲載)

※喜久屋書店はビーエルホールディングスの書店部門ですが、このビーエルホールディングスは元々二次取次のキクヤ図書販売であり、ジュンク堂書店はこのキクヤ図書販売の書店部門が独立して出来たという経緯があります。

4. まとめ
 ジュンク堂の仙台本店、仙台ロフト店閉店で生じた空きの後継テナントはいずれも書店が入っており、書店面積や在庫冊数はかなり減少していますが書店数の減少は起きていません。雑誌や新刊書の露出という観点では書店数減少は悪影響しかありませんので、この点が回避されているのはまだ良かったのではないでしょうか。

 喜久屋書店に関しては従来のコミック専門から総合書店に転換して一般書も扱うようになった事で仙台での事業拡大になっています。

 仙台駅周辺の大日本印刷グループの資本系列の書店の観点で見ると書店数の1店舗削減とジュンク堂、丸善ではカバーしていない漫画・アニメ主体の店舗を文教堂が出店させたという事でまとめられるように思えます。
 ジュンク堂仙台TR店の専門書主体への転換と丸善アエル店の存在、2015年2月の丸善書店とジュンク堂書店の合併統合を考えると今回の再編の狙いは少し見えてくるような気はします。

追記:2014年5月11日にジュンク堂書店岡山店がビブレ岡山閉店に伴って移転ではなく閉店。これは丸善岡山シンフォニービル店があっての事で、仙台と似たケースになっていると思う。仙台が騒ぎになって岡山がならないのか不思議ですね。そもそもどちらも騒ぎになるのが間違いだとは思いますが。